「脂肪由来」「臍帯(さいたい)由来」「骨髄由来」──幹細胞治療の案内には、細胞の出どころを示す言葉が並びます。この由来の違いは、採取のしかたや体への負担だけでなく、自家か他家か、そして法律上の区分にまで関わってきます。代表的なものを整理します。
代表的な由来
| 由来 | 自家/他家 | 採取のしかた | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|---|
| 脂肪 | 主に自家 | 腹部などから少量の脂肪組織を採取する | 局所麻酔下での処置になる。美容領域で扱われることが多い |
| 骨髄 | 主に自家 | 腸骨などから骨髄液を採取する | 採取時の体への負担は脂肪より大きいとされる |
| 臍帯(へその緒) | 他家 | 出産時に得られる臍帯の組織から。提供には同意が必要 | ドナー由来のため、他家として第一種の区分になる |
| 臍帯血 | 他家 | 出産時の臍帯血から | 造血幹細胞移植は保険診療で確立した領域。美容目的の施術とは前提が異なる |
| 歯髄 | 主に自家 | 抜歯した歯の内部(歯髄)から | 親知らずの抜歯などに合わせて採取されることがある |
なお「幹細胞」とひとことで言っても、由来によって取り出される細胞の性質は同じではありません。また、由来ごとの有効性の優劣が確立しているわけでもありません。
由来で変わるのは「区分」と「手続き」
最も実務的な違いはここです。本人から採取する自家であれば第二種再生医療等、ドナー由来の他家であれば第一種再生医療等にあたります。日本再生医療学会の説明では、第一種は「ヒトに実施されたことが極めて少なく、リスクが高いと想定されるもの」、第二種は「すでにヒトに実施されたことがあり、中程度のリスクが見込まれるもの」とされています。
第一種は、認定再生医療等委員会の意見に加えて厚生科学審議会の意見聴取と一定の待機期間が求められ、手続きは最も重くなります。いずれの場合も提供計画の届出が必要です。
この分類はリスクの程度による区分であり、有効性を評価したものではない点は、あわせて覚えておきたいところです。
「臍帯由来だから若い細胞」という説明の読み方
臍帯由来は「若い細胞」「元気な細胞」と説明されることがあります。出生時に得られる組織であることは事実ですが、それがそのまま治療効果の優位を意味するわけではありません。
実際に体の中でどう働くかは、細胞の状態だけでなく、培養や保存の条件、投与の方法、受ける人の状態にも左右されます。由来の説明は判断材料のひとつであって、それ単独で結論を出せるものではありません。
由来の表示は「開示レベル」で読む
由来の説明には、細かさに段階があります。製剤名や製造元まで示しているもの、由来だけを示しているもの、いずれも示していないもの。この開示の程度そのものが、比較の材料になります。
詳しくは「臍帯由来」「脂肪由来」表示の読み方 ― 開示レベルという見分け方で整理しています。
確認しておきたいこと
- 由来(脂肪・骨髄・臍帯・歯髄など)と、自家か他家か
- 他家の場合は、ドナーの条件と感染症検査の体制
- 届け出ている区分(第一種/第二種/第三種)と、届出の有無
- 培養を行う細胞培養加工施設がどこか
- 採取から投与までの回数・期間・総額と、追加費用が発生する条件
- 想定されるリスク・副作用と、起きた場合の対応
届出のある医療機関は再生医療ポータルの提供機関検索で調べられます。説明と公開情報が一致しているかを確かめておくと安心です。
よくある質問
Q. どの由来がいちばん効果がありますか?
A. 由来ごとの優劣が確立しているわけではありません。効果には個人差があり、適応の判断は医師の診察によります。
Q. 自分の脂肪から採るほうが安全ですか?
A. ドナー由来の感染リスクという観点では想定しにくくなります。ただし採取のための処置や培養工程には別のリスクがあり、単純に安全と言い切れるものではありません。
Q. 臍帯由来は日本で受けられますか?
A. 他家にあたるため、第一種再生医療等として届け出られている必要があります。届出の有無は公開情報で確認できます。
Q. 「幹細胞培養上清液」も由来があるのですか?
A. あります。ただし培養上清液やエクソソームは細胞を含まないため、再生医療等安全性確保法の直接の対象外です。届出の対象にもなりません。→ エクソソームとは何か?
Q. 由来を教えてもらえない場合は?
A. 説明が得られないこと自体が、判断材料のひとつです。記録の残る形で確認し、それが難しい場合は理由もあわせて尋ねておくとよいでしょう。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について」
- 日本再生医療学会 再生医療ポータル「第一種・第二種・第三種の違い」
- 日本再生医療学会 再生医療ポータル「提供機関をさがす」
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」
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この記事について
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