顔のこけやたるみに対して「自分の脂肪を注入する」という選択肢を見聞きしたことがある方は多いと思います。一方で、同じ脂肪を使う施術でも「脂肪注入」と呼ばれるものと「脂肪由来幹細胞治療」と呼ばれるものがあり、法律上の扱いも変わってきます。ここでは、どこからが「再生医療等」として規制の対象になるのかという線引きを、中立的に整理します。

「脂肪を使う施術」はひとくくりにできない

脂肪を用いる美容領域の施術は、加工の度合いによっておおまかに次のように分けて考えられます。呼び名はクリニックや機器メーカーごとに異なるため、名称だけで判断せず「何をしているか」で見るのが確認の出発点になります。

1. 採取した脂肪をほぼそのまま移植する

吸引した脂肪組織から余分な血液や麻酔液を除いて注入するタイプです。組織そのものを移す形に近く、加工の程度は比較的小さいと位置づけられます。

2. 脂肪を濾過・遠心などで濃縮してから注入する

フィルターや遠心分離で不要な成分を減らし、脂肪を濃縮してから注入する方法です。専用機器を用いた製品名で案内されることもあります。加工の内容・程度によって法的な扱いの判断が分かれうる領域です。

3. 脂肪から幹細胞(間葉系幹細胞)を分離して用いる

酵素処理などで脂肪組織から細胞成分を取り出し、場合によっては培養して数を増やしてから投与する方法です。ここまで来ると、一般に「細胞加工物を用いた再生医療等」として扱われます。

法律上の線引き ― 再生医療等安全性確保法

日本では、細胞加工物を用いる医療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)」の対象となり、人体への影響の大きさに応じて第一種・第二種・第三種に分類されます。分類に応じて、あらかじめ認定再生医療等委員会の審査を受け、厚生労働大臣へ「再生医療等提供計画」を届け出たうえでなければ提供できません。

一般論として、自分の細胞を培養して用いる幹細胞治療は第二種に分類されることが多く、培養を伴わず、採取した部位と同じ働きをする部位に戻す(相同利用)ケースは第三種と整理されることがあります。ただし個別の施術がどの区分に当たるかは、加工の内容・投与部位・目的によって判断されるため、施術名だけでは決まりません。

逆にいえば、脂肪由来幹細胞を用いる施術を検討する場合、その医療機関が該当する提供計画を届け出ているかは、名称や広告文よりも先に確認しておきたい客観的な事実といえます。届出のある計画は、厚生労働省のウェブサイトで公表されています。

検討するときに確認しておきたい視点

  • 採取した脂肪に対して、具体的にどのような加工(濃縮・分離・培養)を行うのか
  • 細胞加工物を用いる場合、再生医療等提供計画の届出はあるか。区分は第何種か
  • 想定されるリスク(腫れ・内出血・しこり・石灰化・感染・左右差・脂肪の吸収など)について、一般的な説明がなされているか
  • 効果の見込みが、どの程度の根拠にもとづいて説明されているか
  • 再手術や修正が必要になった場合の費用・対応の取り決め

なお、注入した脂肪がどの程度定着するか、見た目の変化がどの程度かは、体質・年齢・注入部位・手技などの条件で大きく異なり、効果や経過には個人差があります。特定の数値や結果を保証するような説明には、根拠の確認が必要です。

よくある質問

Q. 脂肪注入はすべて「再生医療」にあたりますか?

いいえ、一律ではありません。細胞加工物を用いるかどうかが基本的な分かれ目になり、加工の程度によって法の対象となるかが判断されます。気になる場合は、施術前に医療機関へ「この施術は再生医療等安全性確保法の対象か」を直接確認するのが確実です。

Q. 「培養する/しない」で何が変わりますか?

培養を伴うと、細胞を体外で長く扱うぶん品質管理や安全性確保の要求が高くなり、一般にリスク分類も上位(第二種側)になります。準備期間や費用も変わってくるため、スケジュール面でも確認しておきたいポイントです。

Q. 幹細胞を使えば必ず効果が高いのですか?

そうとは言い切れません。美容目的での有効性は研究段階のものも多く、公表されているデータの質や対象人数はさまざまです。「幹細胞」という言葉そのものが効果を保証するわけではない、という前提で情報を読むことをおすすめします。

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本記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。

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