美容の分野で「エクソソーム」という言葉を見かける機会が増えました。ただ、それが何を指す言葉で、幹細胞治療とどう違い、日本の制度上どういう位置づけにあるのかは、あまり整理されて語られていません。基礎から順に確認します。

エクソソームとは何か

エクソソームは、細胞から放出される「細胞外小胞(さいぼうがいしょうほう/EV)」と呼ばれる粒子の一種です。直径はおおよそ30〜150ナノメートル。1ミリメートルの1万分の1以下という、光学顕微鏡では見えない大きさです。

脂質の膜に包まれた袋のような構造をしていて、内側にタンパク質や核酸(マイクロRNAなど)を含みます。細胞どうしが情報をやり取りする手段のひとつとして働いていると考えられており、この「情報の運び手」という性質が、研究上の注目点になっています。

「細胞そのもの」ではない ― 幹細胞との違い

最も誤解されやすいのがここです。幹細胞治療が細胞そのものを体に入れるのに対し、エクソソームは細胞が出した分泌物を用います。細胞は含まれていません。

幹細胞治療エクソソーム・培養上清液
体に入れるもの細胞そのもの細胞が放出した分泌物(細胞は含まない)
大きさ細胞(数〜数十マイクロメートル)ナノメートル単位の粒子
法律上の扱い再生医療等安全性確保法の対象同法の直接の対象外
提供前の手続き提供計画の届出などが必要同法に基づく届出の対象ではない
承認された医薬品一部の分野で存在する治療を目的としたものは国内に存在しない

「幹細胞由来」と書かれていても、細胞が入っているとは限りません。この点は、説明を受けるときに最初に確認したいところです。

培養上清液との関係

幹細胞を培養すると、細胞が浮かんでいた液体が残ります。これが培養上清液(ばいようじょうせいえき)です。この液には、細胞が出したさまざまな成分が含まれています。

そこからエクソソームを取り出し、濃縮・精製したものが、いわゆるエクソソーム製剤にあたります。つまり両者は親子のような関係で、培養上清液のほうが幅広い成分を含み、エクソソーム製剤はその一部を取り出したもの、という位置づけになります。同じ施術として案内されることもありますが、中身は同一ではありません。

制度上の位置づけ

細胞を含まないため、エクソソームや培養上清液を用いる医療は、再生医療等安全性確保法の直接の対象外とされてきました。同法に基づく提供計画の届出の対象にもなりません。また、治療を目的として承認されたエクソソーム医薬品は、国内には存在しません。

一方で、行政もこの状況を放置しているわけではありません。厚生労働省は2024年7月31日付で、幹細胞培養上清液やエクソソーム等を用いる医療について事務連絡を発出し、品質やリスクの管理に注意を払うこと、日本再生医療学会が策定した「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」を参照して安全な実施に努めることを求めています(日本再生医療学会の告知)。

制度そのものの見直しについては別の記事で整理しています。→ エクソソーム治療の法規制はどうなる?

品質が施設ごとに違いうる理由

「エクソソーム」は物質の分類名であって、規格化された製品名ではありません。そのため、次のような点が提供元ごとに異なります。

  • 元になる細胞の由来(臍帯・脂肪・歯髄など)とドナーの条件
  • 培養に使う培地や培養期間
  • エクソソームの取り出し方(精製方法)と純度
  • 保存・輸送の温度管理
  • 濃度の表記方法(粒子数なのか、タンパク質量なのか)

同じ言葉で案内されていても、中身が同じとは限らない。これが、比較を難しくしている最大の理由です。

説明を受けるときの確認ポイント

  • 細胞そのものか、細胞の分泌物か
  • 培養上清液なのか、そこから精製したエクソソームなのか
  • 元になる細胞の由来と、その根拠となる資料があるか
  • 品質検査(無菌試験・粒子数など)の記録が示されるか
  • 想定されるリスク・副作用と、起きた場合の対応
  • 費用の総額と、追加費用が発生する条件

なお、医療機関の広告には医療広告ガイドラインが適用され、患者の体験談や術前術後の写真を無条件に掲載することは原則として認められていません。こうした表現が目立つ場合は、その根拠を確認する材料になります。

よくある質問

Q. 規制の対象外ということは、安全という意味ですか?

A. 逆です。対象外とは、国が個別に有効性や安全性を確認する仕組みが用意されていない、という意味です。安全性が保証されていることを示すものではありません。

Q. 化粧品に「エクソソーム」と書かれているものは同じですか?

A. 別のものと考えてください。化粧品は薬機法上の化粧品として扱われ、医療機関で行われる施術とは制度も配合される成分も異なります。

Q. 幹細胞治療より手軽だと聞きました。

A. 届出などの手続きが不要な分、提供までの手順は簡略になります。ただしそれは、品質を確認する仕組みが省かれているという裏返しでもあります。手軽さと安全性は別の話です。

Q. 研究では効果が報告されていると聞きます。

A. 基礎研究や動物実験のレベルでの報告は複数あります。一方で、ヒトを対象にした臨床試験は初期段階のものが中心で、研究の報告と、承認に足る有効性の証明とは、まだ距離があります。

Q. 効果には差が出ますか?

A. 効果には個人差があり、適応の判断は医師の診察によります。前述のとおり、由来や精製方法が異なれば前提も変わるため、同じ施術名でも同一とは限りません。

参考にした公的情報

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この記事について

本記事は、厚生労働省・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)などが公表する一次情報をもとに、再生医療ガイド編集部が作成しています。当サイトは医療機関ではなく、特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。効果には個人差があり、治療を受けられるかどうかや適応の判断は、医師の診察に基づいて行われます。記事の作成方針と参照範囲については運営者情報・編集方針をご覧ください。内容の誤りにお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡ください。

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