「ピーリング」という言葉は、医療機関でもサロンでも、自宅で使う化粧品でも使われます。同じ名前でも、法律上の扱いと、行える人は同じではありません。

この記事で整理するのは、酸などの薬剤で皮膚の表面を剥離する行為の国内での位置づけ、2025年8月に厚生労働省が出した美容医療に関する通知が示したこと、学会のガイドラインによる深さと適応の区分です。特定の施術や医療機関を勧めるものではありません。効果や副作用の出方には個人差があります。

酸で表皮を剥離する行為は、医行為として整理されている

厚生労働省は「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」(平成13年11月8日 医政医発第105号)で、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為を3つ挙げています。その(3)が「酸等の化学薬品を皮膚に塗布して、しわ、しみ等に対して表皮剥離を行う行為」です。

この通知に「ケミカルピーリング」という語はありませんが、内容はこれに当たります。残りの2つは、レーザー光線などで毛乳頭等を破壊する行為と、針先に色素を付けて皮膚に色素を入れる行為(いわゆるアートメイク)です。いずれも、医師免許のない人が業として行うと医師法第17条に違反するとされています。

分かれ目は呼び名ではなく、「何を使って、どこまでの作用を起こす行為か」です。

2025年8月の通知が改めて示したこと

厚生労働省医政局長は、令和7年8月15日に「美容医療に関する取扱いについて」(医政発0815第21号)を発出しました。美容医療をめぐる相談の増加を背景に、医療法・医師法上の留意点を整理した通知です。要点は次のとおりです。

  • 無資格者が主訴や希望を聞いて具体的な治療方法を提案・決定する行為は、料金説明の体裁であっても医行為に当たるとされる
  • 医師免許を有しない者が業として行う脱毛行為等、いわゆるアートメイク、HIFU施術は医師法第17条違反に当たるとして、過去の通知が改めて引用されている
  • メールやチャットなど文字情報だけの診断・処方は、医師法第20条の無診察治療等の禁止に触れるおそれがあるとされる
  • 診療録(カルテ)は遅滞なく作成し、5年間保存することが求められる
  • 虚偽・誇大・比較優良の広告、治療内容に関する体験談、ビフォーアフター写真のみの掲載は医療広告ガイドラインで認められていない
  • 保健所等は医療法第25条第2項に基づく立入検査を行える。改善命令や業務の停止、開設許可の取消しの根拠条文も示されている

この通知も根拠として医政医発第105号を引用しています。105号の(3)に当たる行為は、通知の整理では「医師が行う必要がある行為」の側に置かれていると読めます。

剥離の深さで4つのレベルに分かれる

日本皮膚科学会は「ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」(日皮会誌118巻3号、2008年)で、剥離の深さを4段階に分けています。以下は区分の説明であり、どれかを推奨するものではありません。薬剤はあくまで目安で、実際の深さは濃度・pH・塗布時間など多くの条件で変わるとされています。

レベル到達するとされる深さ挙げられている薬剤例
レベル1(最浅層)角層20〜35%のα-ヒドロキシ酸(グリコール酸・乳酸)、20〜35%のサリチル酸、10〜20%のTCA
レベル2(浅層)表皮の顆粒層から基底層の間上と同様の薬剤。50〜70%のグリコール酸、35〜50%のTCAもこの範囲に及ぶ
レベル3(中間・深層)表皮と真皮乳頭層の一部から全部50〜70%のグリコール酸、35〜50%のTCA、ベーカーゴードン液
レベル4(深層)表皮と真皮乳頭層および網状層ベーカーゴードン液、88%以上のフェノール

深くなるほど、色素沈着や瘢痕などが起きたときの影響も大きくなります。ガイドラインは、専門医ないし同等の技術・知識を有する医師の十分な管理下で行うべきとしています。

ガイドラインが挙げる適応と推奨度

改訂第3版は適応ごとに推奨度を付けています。ざ瘡の非炎症性皮疹に対するグリコール酸やマクロゴール基剤のサリチル酸はC1(行ってもよい)、小じわに対するグリコール酸等もC1です。日光黒子・肝斑・雀卵斑・炎症後色素沈着はC1またはC2(行わないほうがよい)に分かれ、国内のエビデンスが乏しく欧米の報告を参考にした推奨には印が付きます。

2001年版・2004年版と比べ、適応に挙げる疾患は絞られました。「幅広い肌悩みに効く方法」として位置づけられてはいない、という点が読み取れます。

なお「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」には、ケミカルピーリング単独の推奨項目はありません。同指針は推奨度を1(強く推奨)/2(弱く推奨・提案)/0(決められない)の3段階で示す別の体系で、肝斑に対するレーザー・IPLの併用が推奨度2とされています。

事前に伝えておきたいことと、起こりうること

ガイドラインは、施術前に確認する条件として次のようなものを挙げています。

  • 遮光が十分にできない状況にある、妊娠中・授乳中である
  • 免疫不全の状態、または他の疾患の治療中である
  • ケロイド体質である、施行部位に感染がある
  • 施行部位に手術や放射線治療を受けた既往がある
  • アダパレンなどレチノイドの外用・内服歴がある(休薬期間を考慮する)

起こりうることとして挙げられているのは、刺激感、浮腫、紅斑、水疱、びらん、色素沈着や色素脱失、一過性のざ瘡の悪化などです。まれに肥厚性瘢痕、萎縮性瘢痕、ケロイド、感染、接触皮膚炎が示されています。角層が障害されるため、施術後の遮光の指導も必要とされています。出方には個人差があります。

サロンや市販品の「ピーリング」とは何が違うのか

化粧品や医薬部外品として販売される製品を使った角質のケアは、表皮の剥離を目的に酸などを塗布する行為とは区分が異なります。化粧品で表示できる効能の範囲は定められており、医薬品と同じ説明は使えません。

区分を決めるのは名称ではなく行為の内容です。「ピーリング」と書かれていても、使う薬剤の種類や濃度、何を起こす目的かによって扱いが変わります。どの薬剤をどの濃度で使うのか、施術するのは誰かを確認できるかが一つの手がかりになります。

2025年8月の通知が無資格者のカウンセリングに触れたのも同じ考え方で、誰が何を決めているのかが線引きに関わります。

幹細胞・エクソソームとの併用を案内された場合

剥離の後に幹細胞やエクソソーム(培養上清液)を導入するという説明を受けることがあります。幹細胞を採取・加工して体に戻す治療は再生医療等安全性確保法の対象で、提供には計画の届出などが必要です。エクソソームを用いる施術は現行法の規制対象外とされ、国内に承認された医薬品はありません(厚生労働省 令和6年7月31日 事務連絡)。

「剥離した皮膚の回復を早める」という説明が、国内で承認された医薬品や公的に確認された方法に基づくのかは、別に確認が必要です。

よくある質問

サロンのピーリングは違法ですか

行為の内容によります。医師免許のない人が業として、酸などの化学薬品を塗布して表皮剥離を行えば、医師法第17条に違反するとされています。一方、化粧品や医薬部外品の製品を用いた角質ケアは区分が異なります。該当するかは使う薬剤と行為の内容で判断されます。

医療機関で受ければ安全ですか

医師が行う前提でも、副作用がなくなるわけではありません。ガイドラインは色素沈着やまれな瘢痕などを挙げています。深さや薬剤、肌の状態で起こりうることは変わるため、事前の説明と、不具合が出たときの対応を確認しておきたいところです。

自宅用のピーリング製品でも同じことが起きますか

製品の区分と濃度が違うため、同じではありません。ただし使い方を誤れば刺激や炎症後の色素沈着が起こることがあります。表示されている使用方法と頻度、遮光の記載を守ってください。

レチノイドを使っています。伝える必要はありますか

ガイドラインは、アダパレンなどレチノイドの外用・内服歴を事前の確認事項に挙げ、休薬期間を考慮するとしています。自己判断で省略せず、使っている外用薬・内服薬をすべて伝えてください。

どの深さが自分に合うか、どう聞けばよいですか

「どの薬剤をどの濃度で、何分置くのか」「どの深さを想定しているのか」「施術後、遮光や化粧の制限がどのくらい続くのか」を聞くと、説明の具体性が分かります。深い場合は創傷治癒に基づく処置が必要になることもあるとされています。

参考にした公的情報

あわせて読みたい

記事の内容についてのご質問や、誤りのご指摘はお問い合わせフォームからお寄せください。個別の治療の適否の判断や、医療機関のご紹介は行っていません。

本記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。

掲載内容は関係法令の順守を基本とし、可能な範囲で確認・更新に努めていますが、制度改正や情報更新の時期により、掲載時点と現状が異なる場合があります。お気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

最終更新日: