「肌そのものを再生させる注入」といった説明とともに、バイオスティミュレーター(コラーゲン刺激注入剤)という言葉を見かける機会が増えています。ヒアルロン酸のように入れた分だけ形を作るのではなく、素材に対する体の反応を利用するという考え方が、「再生」という表現と結びつきやすいためです。この記事では、その仕組みと、再生医療等安全性確保法が対象とする治療との線引き、そして検討する際に確認しておきたい視点を整理します。
バイオスティミュレーターとは何か
バイオスティミュレーターは、体内で徐々に分解される素材を皮下に注入し、それに対する組織の反応としてコラーゲンなどの産生を促すことをねらった注入剤の総称です。注入直後のボリュームそのものではなく、数か月かけて起こる組織側の変化を目的としている点が、従来のフィラー(充填剤)との違いとして説明されます。
主に使われる素材
- ポリ-L-乳酸(PLLA):生分解性のポリマー。数か月かけて分解される過程で組織反応が起こるとされる
- カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA):骨の主成分に近い微粒子をゲルに分散させたもの
- ポリカプロラクトン(PCL):同じく生分解性のポリマー
いずれも素材の性質・分解の速さ・想定される持続期間が異なり、同じ「バイオスティミュレーター」という括りでも中身は一律ではありません。
「再生医療」とは法的な位置づけが異なる
ここが混同されやすい点です。バイオスティミュレーターは細胞を用いない注入剤であり、人の細胞を加工して用いる治療を対象とする再生医療等安全性確保法の枠組みには含まれません。一方、自身の細胞を採取・培養して投与する幹細胞治療などは同法の対象で、提供にあたって再生医療等提供計画の届出などの手続きが求められます。
また、エクソソーム(幹細胞培養上清液)を用いる施術は現行法上この枠組みの外にあり、この用途で承認された医薬品は存在しません。「再生」という同じ言葉が使われていても、根拠となる制度も、確認すべき点も異なります。
効果の現れ方についての考え方
組織側の反応を利用する性質上、変化が見えるまでに時間がかかるとされ、注入直後に完成形になるものではないと説明されます。どの程度の変化が生じるか、どのくらい続くかは、使用する製剤・注入部位・量・もともとの状態などによって幅があり、効果の感じ方には個人差があります。数字で示された持続期間はあくまで目安であり、すべての人に同じ結果が生じることを意味するものではありません。
検討するときに確認しておきたい視点
1. 使用する製剤の承認状況
この分野の注入剤は製品ごとに国内での承認状況が異なり、国内未承認の製剤が医師の判断と責任のもとで用いられる場合もあります。未承認薬が使われる場合には、その旨と、健康被害が生じたときの救済制度の適用について説明を受けられることになっています。どの製品を使うのか、承認済みか未承認かを事前に確認しておくと判断しやすくなります。
2. 遅れて現れる合併症があること
注入から一定期間が経ってから、しこり(結節)などの症状が現れる例が報告されています。施術直後に問題がなくても経過観察が必要になり得るため、時間が経ってから相談したいときにどう対応してもらえるのかを、あらかじめ確認しておく意味があります。
3. 何を目的とした施術なのか
輪郭のボリュームを補いたいのか、肌の質感の変化を期待しているのかで、適した選択肢は変わります。目的が言語化されていないまま「新しい」「再生」といった言葉で選ぶと、想定と結果がずれやすくなります。
よくある質問
Q. ヒアルロン酸注入とは何が違うのですか?
A. ヒアルロン酸は注入した物質そのものがボリュームを作ります。バイオスティミュレーターは素材が分解される過程での組織の反応を目的としており、変化の現れ方や時間の経過が異なると説明されます。どちらが優れているというものではなく、目的が異なります。
Q. 「肌が再生する」と説明されましたが、再生医療の一種ですか?
A. 細胞を用いない注入剤は、再生医療等安全性確保法が対象とする再生医療等には該当しません。広告や説明で使われる「再生」という言葉と、法律上の区分は別のものとして読み分ける必要があります。
Q. 一度入れたら元に戻せないのでしょうか?
A. 素材によって分解のされ方が異なり、ヒアルロン酸のように分解酵素で速やかに調整するといった対応が想定されていない製剤もあります。修正が必要になった場合にどのような選択肢があるのかは、施術前に確認しておきたい点のひとつです。
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