美容医療や再生医療の情報を探すと、体験談や術前術後の写真、「満足度98%」といった数字が目に入ります。ただ、医療機関の広告には医療法にもとづくルールがあり、いま挙げたような表現の多くは原則として認められていません。何が禁止されているかを知っておくと、目にした情報の読み方が変わります。
医療広告には法律上のルールがある
医療機関の広告は、医療法第6条の5などによって規制されています。対象は看板やチラシだけでなく、ウェブサイトやSNS、広告記事も含まれます。詳細は厚生労働省の医療法における病院等の広告規制についてにまとめられており、実務の基準は医療広告ガイドラインとして公開されています。
一般の商品広告と違い、医療広告は「誇張してはいけない」だけでなく、書いてよい項目そのものが限定されている点が特徴です。
禁止されている広告の類型
ガイドラインでは、次のような広告が禁止されています。
| 類型 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 虚偽広告 | 内容が事実と異なる広告 | 医療法第6条の5第1項 |
| 比較優良広告 | 他の医療機関と比較して優良である旨の広告 | 同第2項第1号 |
| 誇大広告 | 事実を誇張した広告 | 同第2項第2号 |
| 公序良俗違反 | 公の秩序・善良の風俗に反する内容 | 同第2項第3号 |
| 体験談 | 患者その他の者の主観または伝聞にもとづく、治療等の内容・効果に関する体験談 | 省令第1条の9第1号 |
| 術前術後の写真 | 治療等の内容・効果について誤認させるおそれのある、治療前後の写真等 | 同第2号 |
このほか、費用を強調して患者を誘引するなど品位を損ねる内容の広告、薬機法や景品表示法といった他の法令に違反する内容の広告も認められていません。
つまり「実際に受けた人の声です」「加工していない写真です」と書き添えてあっても、それだけで問題がなくなるわけではない、ということです。
「限定解除」という例外
もっとも、術前術後の写真がウェブサイトに載っていること自体が、ただちに違反とは限りません。ウェブサイトのように患者が自ら求めて情報を取りにいく媒体では、一定の要件を満たす場合に広告可能事項の限定が解除される仕組みがあるためです。
要件はおおむね次のとおりで、自由診療については3つめと4つめが加わります。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること
- 表示内容について患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を明示すること
- 自由診療について、通常必要とされる治療等の内容や費用等に関する事項を情報提供すること
- 自由診療について、主なリスク・副作用等に関する事項を情報提供すること
ここが読み手にとって実用的なポイントです。術前術後の写真が載っているのに、費用の目安もリスク・副作用の説明も見当たらない——そのページは、限定解除の要件を満たしていない可能性があります。写真の有無そのものより、費用とリスクがセットで書かれているかを見るほうが、判断材料としては確実です。
厚生労働省は具体的な違反例をまとめた医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版・令和7年3月)も公開しており、体験談や術前術後写真、費用表示の事例が図解されています。
口コミサイトやSNSはどう読むか
口コミサイトへの投稿や、個人が自発的に書いたSNSの感想は、医療機関が出す広告とは別のものとして扱われます。ただし、医療機関が費用を負担して書かせたものや、便宜を図って投稿を依頼したものは、実質的に広告とみなされます。
読むときの視点としては、次のような点が手がかりになります。
- 施術名だけでなく、費用・回数・経過が具体的に書かれているか
- 良い面だけでなく、痛みやダウンタイム、期待と違った点にも触れているか
- 同じ言い回しの投稿が短期間に集中していないか
- 投稿者が広告であることを明示しているか(ステルスマーケティングは景品表示法上の不当表示にあたります)
なお、感想がどれだけ具体的でも、それは一人の経験です。効果には個人差があり、他の人に同じ結果が起きることを示すものではありません。
数字の見方
「満足度」「症例数」といった数字は印象に残りますが、次の点が示されていなければ、比較には使えません。
- 誰を対象に、何人に聞いたのか
- いつ、どのような方法で集計したのか
- 「満足」の定義は何か
- 対象から外した人はいるか
出典が示されない数字は、根拠の確認しようがない、と考えておくのが安全です。
公開情報と突き合わせる
広告表現を疑うより、公開情報と照らし合わせるほうが早い場合もあります。幹細胞を用いる治療であれば、再生医療等提供計画の届出が必要で、届出のある医療機関は再生医療ポータルの提供機関検索で調べられます。広告に書かれている内容と公開情報が一致しているかは、その場で確かめられる数少ない客観的な材料です。
見かけたときの確認リスト
- 費用の総額と、追加費用が発生する条件が書かれているか
- 主なリスク・副作用が書かれているか
- 問い合わせ先が明示されているか
- 「必ず」「絶対に」「No.1」といった断定・比較の表現が使われていないか
- 数字に出典が添えられているか
- 届出の有無が公開情報と一致しているか
よくある質問
Q. 体験談が載っている医療機関は違反しているのですか?
A. 一概には言えません。医療機関自身が広告として掲載する体験談は禁止の対象ですが、第三者が運営する口コミサイトへの個人の投稿は、広告とは別に扱われます。ただし依頼や対価があれば話は変わります。
Q. 違反しているように見えるとき、どこに相談できますか?
A. 医療広告については、各都道府県・保健所設置市・特別区の医療広告相談窓口が受け付けています。契約や解約に関する内容であれば、消費者ホットライン(188)や消費生活センターが窓口になります。
Q. 「厚労省承認」と書かれていれば安心ですか?
A. 何が承認されているのかを確認する必要があります。再生医療等提供計画の「届出」と、医薬品としての「承認」はまったく別の手続きです。届出は安全性確保のための手続きであり、有効性を国が保証するものではありません。
Q. 広告が適切なら、治療も適切ということですか?
A. 別の話です。広告規制は表示のルールであり、施術の適応や質を保証するものではありません。最終的な判断は医師の診察を受けたうえで行う必要があります。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」(指針本文)
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」令和7年3月
- 厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について」
- 日本再生医療学会 再生医療ポータル「提供機関をさがす」
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判断に迷ったときは
当サイトは特定の医療機関や施術をおすすめする立場ではありません。情報が多く整理しきれないときは、お問い合わせフォームもご利用ください。最終的な判断は、必ず医師の説明を受けたうえでご自身で行ってください。
この記事について
本記事は、厚生労働省・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)などが公表する一次情報をもとに、再生医療ガイド編集部が作成しています。当サイトは医療機関ではなく、特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。効果には個人差があり、治療を受けられるかどうかや適応の判断は、医師の診察に基づいて行われます。記事の作成方針と参照範囲については運営者情報・編集方針をご覧ください。内容の誤りにお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡ください。
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