「プラセンタ注射」は美容クリニックのメニューでよく見かける一方で、国内で承認された医薬品としての顔も持っています。そして2026年10月1日から、この注射を受けた人の献血の取り扱いが変わりました。この記事では、(1)献血のルールが何がどう変わったのか、(2)承認されている効能と美容目的の関係、(3)「プラセンタ」と名のつくものの法律上の区分、の3点を公的資料をもとに整理します。特定の治療やクリニックをすすめるものではなく、受けたときの感じ方には個人差があります。

2026年10月1日、献血のルールが変わった

日本赤十字社は、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に関する献血基準を令和8年(2026年)10月1日から変更しました。これまでヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤を使ったことがある人は献血を遠慮してもらう取り扱いでしたが、変更後は国内承認製品(ラエンネック、メルスモン)に限り「最終使用日から3か月間は献血を控える」という基準になりました。あわせて、英国を含む欧州等への滞在歴に基づく献血制限も撤廃されています。

この見直しは、令和8年1月14日に開かれた厚生労働省の薬事審議会血液事業部会安全技術調査会での議論を踏まえたものです。国内外のvCJDの発生状況、国内での感染リスクの評価結果、諸外国における献血制限の状況などを総合的に勘案した結果とされています。

なお日本赤十字社は従来から、プラセンタ注射薬の使用によってvCJDに感染した事例はこれまで報告されていないとしたうえで、ヒト由来の原料を使うことから「念のための措置」として制限してきた、と説明しています。制限の対象は注射剤のみで、サプリメントやドリンク剤、化粧品、内服薬は含まれません。

そもそも、何が注射されているのか

国内で医薬品として承認されているプラセンタ注射剤は、ラエンネックとメルスモンの2つです。いずれもヒトの胎盤を原材料とした抽出物で、添付文書上も「有効成分を単一または数種の物質に特定することはできない」とされる多成分の製剤です。単一の成分を狙って効かせる薬とは、成り立ちが異なります。

2剤はいずれも「特定生物由来製品」に位置づけられており、医療機関には使用する患者への説明と、使用記録の作成・保存が求められます。添付文書には、これまでに本剤の投与でvCJD等が伝播したという報告はないものの、理論的な伝播のリスクを完全には排除できないため、患者への説明を十分に行い、治療上の必要性を検討したうえで使うように、という趣旨の注意が記載されています。受ける側としては、この説明が実際にあるかどうかが一つの目安になります。

承認されている効能と、美容目的の位置づけ

添付文書上の効能・効果は、メルスモンが「更年期障害、乳汁分泌不全」、ラエンネックが「慢性肝疾患における肝機能の改善」です。つまり、肌のハリやくすみ、疲労感といった美容・体調目的は、承認された効能には含まれていません。

美容目的で使う場合は承認された効能の範囲外(いわゆる適応外使用)にあたり、公的医療保険は使えず自由診療になります。「もともと保険診療で使われている薬だから安心」という説明と、「美容目的での効果が確かめられている」ことは、別の話です。美容領域での有効性を比較試験で検証した報告は限られており、評価が定まっているとは言いがたいのが現状です。「必ず効く」「確実に若返る」と読める説明があれば、その根拠がどこにあるのかを確認したほうがよいでしょう。

「プラセンタ」と名のつくものの区分

同じ「プラセンタ」でも、法律上の扱いはまったく異なります。以下は区分を整理したもので、どれかをすすめたり優劣をつけたりするものではありません。

区分法律上の位置づけ献血の扱い(2026年10月1日〜)
プラセンタ注射剤(国内承認)医薬品(特定生物由来製品)。効能は更年期障害・乳汁分泌不全/慢性肝疾患の肝機能改善最終使用日から3か月は控える
プラセンタのサプリ・ドリンク・化粧品食品・化粧品など。原料は豚・馬由来のものが多いこの制限の対象外
ヒト幹細胞培養上清液・エクソソーム承認された医薬品は存在しない。2024年7月に国から注意喚起の事務連絡が出ているこの基準とは別。医療機関・血液センターに要確認
幹細胞そのものを投与する施術再生医療等安全性確保法の対象。提供には計画の届出等が必要この基準とは別。医療機関・血液センターに要確認

受ける前に確認しておきたいこと

  • 使うのは国内で承認された製剤か。2剤のどちらか、1回あたりの量と回数の目安
  • 承認された効能の範囲内の診療か、美容目的の適応外使用(自由診療)か
  • 費用は1回いくらで、想定される総額はいくらか。回数券や継続契約の有無
  • 特定生物由来製品としての説明と記録について、どう案内されるか
  • 献血を予定しているなら、最終使用日から3か月の制限がかかること
  • 継続的な契約を結ぶ場合、中途解約やクーリング・オフがどう扱われるか

よくある質問

Q. 2026年10月1日より前に注射を受けた人も献血できますか

新しい基準は10月1日以降の献血に適用されます。国内承認製品を使っていて、最終使用日から3か月以上たっていれば対象になり得ますが、献血の可否はほかの基準(服薬内容、海外からの帰国後の期間など)とあわせて当日の問診で判断されます。予定がある場合は、事前に最寄りの血液センターへ確認してください。

Q. プラセンタのサプリやドリンクも制限の対象ですか

対象は注射剤のみです。健康食品(サプリメント・ドリンク剤)、化粧品、内服薬は含まれないと説明されています。市販品の多くは豚や馬など動物由来で、ヒト胎盤由来の注射剤とは原料そのものが異なります。

Q. 美容目的でも保険は使えますか

使えません。承認された効能に当てはまる診療でなければ、自由診療として全額自己負担になります。同じ薬剤でも、目的によって保険の扱いが変わる点は押さえておきたいところです。

Q. 「ヒト幹細胞培養上清液」や「エクソソーム」と同じものですか

別のものです。プラセンタ注射剤は国内で承認された医薬品ですが、ヒト幹細胞培養上清液やエクソソームを用いる施術については、現時点で承認された医薬品は存在しません。2024年7月には、安全性や広告表示に関する国からの注意喚起の事務連絡も出ています。名称が似ていても、法律上の位置づけはまったく違います。

Q. 副作用はありますか

注射部位の痛みや発赤、まれに発疹などが知られています。起こり方には体質や体調による差があります。持病や服用中の薬、妊娠・授乳の有無を含めて、事前に医師へ伝えたうえで判断してください。

参考にした公的情報

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本記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。

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