肌にごく細い針で無数の小さな穴をあけ、肌そのものが持つ「治ろうとする働き」を引き出す。マイクロニードリング(ダーマペンなどの機器名で呼ばれることが多い施術)は、こうした説明とともに紹介されます。一方、当サイトが扱ってきた幹細胞治療やエクソソームは、細胞そのものや細胞が出す物質を体に入れるもので、成り立ちがまったく異なります。

この記事で整理するのは、次の4点です。①創傷治癒という体の反応を利用する施術の仕組み、②細胞を使う再生医療との制度上・考え方の線引き、③2026年時点で公表されている周辺の研究動向、④検討するときに確認しておきたい視点。特定の施術・機器・医療機関をすすめるものではなく、感じ方や経過には個人差があります。

マイクロニードリングとは何を指すのか

マイクロニードリングは、極細の針を備えた器具で皮膚の表面から真皮の浅い層にかけて微小な穴を多数つくる施術の総称です。手動のローラー型、電動のペン型、針の先端から高周波を流す複合型など、いくつかの方式があります。針の長さ・密度・出力の設定によって、皮膚に加わる侵襲の程度は大きく変わります。

国内では特定の製品名で呼ばれることが多いのですが、美容目的で使われるこの種の機器には、薬機法上の承認を受けていない、いわゆる未承認機器にあたるものが少なくありません。美容目的の施術である以上、公的医療保険の対象にもならず、自由診療として扱われます。

「肌育」という言い換えについて

近年は「強く効かせる」より「肌を育てる」という文脈で語られる場面が増えています。ただし、言葉づかいが穏やかになっても、皮膚に意図的な微小損傷を加えるという物理的な性質そのものが変わるわけではありません。表現ではなく、何をどの深さで行うのかで判断する必要があります。

なぜ「わざと傷をつける」と説明されるのか

説明の骨格になっているのは、創傷治癒という体に元から備わった反応です。一般に、炎症期(傷を認識し、出血を止め、免疫細胞が集まる)、増殖期(線維芽細胞が集まり、コラーゲンなどの細胞外マトリックスや新しい血管がつくられる)、成熟・再構築期(つくられた組織が数か月かけて組み替えられる)という段階を踏むと整理されます。

マイクロニードリングは、このうち増殖期以降の反応を、傷跡が残らない範囲の微小な損傷で引き出そうとする発想にもとづいています。ただし、どの程度の変化がどれくらい続くのかは、針の深さ、回数と間隔、もともとの皮膚の状態、年齢、生活習慣などによって変わります。一定の結果が保証されるものではありません。

「損傷が小さいこと」が前提になっている

深すぎる刺激や過度な回数は、色素沈着や瘢痕(きずあと)といった、望まない方向の治癒反応につながる可能性が指摘されています。裏を返せば、深さと間隔の管理が施術の安全性を左右する部分だということです。

創傷治癒を使う施術と、細胞を使う再生医療の違い

以下は成り立ちの違いを区分として説明するための表であり、どれかを推奨したり、優劣をつけたりするものではありません。

項目創傷治癒を利用する施術(マイクロニードリング等)血液由来の成分を使う方法(PRP等)細胞そのものを使う再生医療(幹細胞治療)
作用の起点物理的な微小損傷に対する体の反応血小板などに含まれる成分投与した細胞と、その細胞が出す物質
体外での細胞加工行わない遠心分離など、比較的少ない処理培養など、加工を伴うことが多い
主な法制度上の枠組み薬機法(機器)・医師法など。未承認機器が使われる場合がある加工の程度により再生医療等安全性確保法の対象となる場合がある再生医療等安全性確保法(提供計画の届出などが必要)
美容目的で承認された製品美容目的で承認された機器は限られる該当なし美容目的で承認された再生医療等製品はない
主に語られるリスクの性質感染、色素沈着、瘢痕、ダウンタイム採血・注入に伴うもの細胞の品質管理、投与に伴うもの

なお、施術と組み合わせて語られることのあるエクソソーム(幹細胞培養上清液)は、現行の再生医療等安全性確保法の対象外に位置づけられており、美容目的で承認された医薬品は存在しません。厚生労働省は令和6年7月31日の事務連絡で、こうした製品の取扱いについて注意を促しています。

制度上の位置づけと、家庭用機器をめぐる注意

  • 未承認機器が使われる場合がある:医療機関で行われる施術であっても、使用される機器が国内で承認されていないことがあります。医療広告ガイドラインでは、未承認の医薬品・医療機器を用いた自由診療について、未承認である旨、入手経路、国内の承認品の有無、想定される副作用などを情報提供することが求められています。
  • 通販で購入できる家庭用ローラー:米国FDAは、家庭用のマイクロニードル製品について承認したものはなく、皮膚障害や感染などのリスクがあるとして注意を示していると報じられています。針の破損、器具の使い回しによる感染、深さを管理できないことなどが指摘されており、自己判断での使用は勧められません。
  • 契約面:美容医療は、一定の期間・金額を超える契約が特定商取引法の「特定継続的役務提供」に該当する場合があり、クーリング・オフや中途解約のルールが適用されることがあります。回数券やコース契約を結ぶ前に、総額と解約条件を確認しておくと安心です。

2026年時点で公表されている周辺の動き

「傷をつけずに、似た方向の変化を狙えないか」という研究も進んでいます。資生堂は2025年1月、「注入」と「押圧」という2つの機能を備えた次世代マイクロニードルを開発したと発表しました。皮膚を傷つけずに浅い層へ成分を届けつつ、深部へ押圧刺激を与える独自構造とされ、研究成果の一部はIFSCC Conference 2024で発表されています。ただしこれは企業の研究開発の発表であり、医薬品としての承認を意味するものではありません。

また、表皮のケラチノサイトと真皮の線維芽細胞のあいだのやりとり(クロストーク)や、細胞外小胞を介した細胞間コミュニケーションに着目した研究も報告されています。皮膚がどのように再構築されるのかを説明する枠組みとして注目されている段階で、いずれも検証の途中にあります。美容の文脈で紹介される際は、研究段階の話と、実際に受けられる施術の話が混ざりやすい点に注意してください。

検討するときに確認したい視点

  • 使用する機器は国内承認品か未承認品か。未承認の場合、その旨と副作用についての説明があるか
  • 針の深さ・回数・施術間隔をどう設定するのか、その考え方の説明があるか
  • ダウンタイム(赤み・かさつきなど)の目安と、その間の過ごし方の指示があるか
  • 感染対策(針カートリッジの使い捨て、施術環境の衛生)がどうなっているか
  • 日焼けの状況や肌質を踏まえた、色素沈着のリスクについての説明があるか
  • 施術後にトラブルが起きたときの連絡先と、対応の範囲が決まっているか
  • 契約の総額・回数・中途解約の条件が書面で示されているか
  • 幹細胞やエクソソームの併用を提案された場合、それぞれの法的な位置づけの説明があるか

よくある質問

Q. ダーマペンとマイクロニードリングは別のものですか?

A. マイクロニードリングが施術の考え方を指す一般名で、ダーマペンはそれを行う機器の製品名のひとつ、という関係にあたります。同じ「マイクロニードリング」でも、使う機器や設定によって侵襲の程度は変わるため、名称だけで内容を判断することはできません。

Q. 何回くらい受ける必要がありますか?

A. 一律に決まった回数はありません。目的とする悩み、肌の状態、設定される針の深さなどによって案内される回数は異なり、変化の感じ方にも個人差があります。回数を前提としたコース契約をすすめられた場合は、途中でやめられるかどうかも含めて確認しておくとよいでしょう。

Q. 家庭用のローラーでも同じことが起きますか?

A. 皮膚に微小な穴をあけるという点では似ていますが、深さの管理、針の衛生、施術後のケアという条件が大きく異なります。米国FDAが家庭用マイクロニードル製品について承認したものはないとして皮膚障害や感染のリスクを指摘していると報じられており、自己判断での使用は勧められません。

Q. 幹細胞やエクソソームの製剤を一緒に塗ると効果が上がりますか?

A. 皮膚に微小な穴があいた状態で何かを塗ることは、通常の塗布とは吸収の条件が変わるため、安全性の評価も別に必要になります。エクソソーム(培養上清液)は再生医療等安全性確保法の対象外で、美容目的で承認された医薬品は存在せず、有効性・安全性の検証は途中の段階です。併用を提案された場合は、その製剤が何で、どのような位置づけのものかを確認してください。

Q. 保険は使えますか?

A. 美容目的で行う場合は自由診療で、公的医療保険の対象外です。一方、疾患としての診断がつく皮膚の症状に対する治療は、保険診療の枠組みで検討されることがあります。目的が美容なのか治療なのかで、制度上の扱いが変わります。

参考にした公的情報

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気になる施術について、どこまでが確認済みの事実で、どこからが検証途中の話なのか。当サイトでは特定の医療機関をすすめることなく、中立の立場でご相談をお受けしています。無料相談はこちらからお気軽にどうぞ。

本記事について

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。

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