美容目的の相談や処方を、画面越しで完結させるサービスが増えています。2026年4月1日、オンライン診療は医療法そのものに位置づけられ、ルールの置き場所が「指針」から「法律と、法に基づく基準」へ移りました。この記事では、何が変わったのか、そして利用する側が画面越しに何を確認できるのかを、厚生労働省の資料をもとに整理します。特定の治療や医療機関を評価するものではありません。効果や副作用の出方には個人差があります。
2026年4月、オンライン診療が医療法に位置づけられた
医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)は令和7年12月12日に公布され、オンライン診療の定義や手続に関する規定は2026年(令和8年)4月1日に施行されました。医療法上のオンライン診療は、映像と音声の送受信によって、医師と離れた場所にいる患者が互いの状態を認識しながら通話できる方法で行う診療、と定義されています。文字のやり取りだけで完結するものは、この定義には当てはまりません。
これまで実務の軸になっていたのは、平成30年に作られた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」でした。指針は守るべき内容を示すものの、違反があったときの行政の手続きが明確ではありませんでした。改正後は、厚生労働大臣が「オンライン診療基準」を定め、オンライン診療はこれに従って行うものとされています(医療法第14条の3)。医療機関の管理者には、基準に沿った診療が行われるよう措置を講じる義務が置かれました(同第14条の4)。
増えた手続きは、届出・受診施設・行政の関与
実施している旨の届出
オンライン診療を行う医療機関は、「オンライン診療を実施している旨」を所在地の都道府県知事に届け出ることになりました。2026年4月1日の時点ですでに実施していた医療機関には経過措置があり、2027年3月末までに届け出ればよいとされています。したがって現時点では、届出がまだ済んでいない医療機関も制度上は存在し得ます。
オンライン診療受診施設という枠
患者が受診する場所を業として提供する施設が、「オンライン診療受診施設」として医療法に新設されました。設置者は設置後10日以内に都道府県へ届け出ます。設置者が医療従事者である必要はなく常駐も求められませんが、連絡先の提示と速やかに対応できる体制は求められます。広告では、その施設自体が医療を提供するものではない旨を明示することなどが条件とされています。
指導・立入検査の担当
指導や立入検査は、原則としてオンライン診療を行う医療機関と受診施設のそれぞれが所在する都道府県が行い、都道府県間で連携するとされています。運営が著しく不適正と認められる場合には、立入検査や是正命令(医療法第24条の2第1項など)の対象になり得ます。
以下は制度の置き場所がどう変わったかを並べた区分の説明であり、どちらかを推奨したり、個々の医療機関を評価したりするものではありません。
| 項目 | 2026年3月まで | 2026年4月以降 |
|---|---|---|
| ルールの置き場所 | 指針(通知)が中心 | 医療法と、法に基づく基準(第14条の3) |
| 実施の届出 | 制度としての届出はなし | 都道府県知事への届出事項に追加(経過措置あり) |
| 受診する場所 | 医療法上の位置づけなし | オンライン診療受診施設として新設・届出制 |
| 行政の是正手段 | 明確な規定が乏しい | 立入検査・是正命令の対象(第24条の2第1項など) |
指針とQ&Aも、2026年4月2日付で改訂された
法改正に合わせ、指針は令和8年4月2日付の医政発0402第3号で、Q&Aは同日付の医政医発0402第1号で改訂されました。保険診療か自由診療かで分けては書かれておらず、美容目的のオンライン診療にも共通して次のような内容が置かれています。
診療前相談は、診療行為ではない
かかりつけの医師ではない医師が初診からオンライン診療を行う場合などに、映像と音声で症状や経過を確認する手順が診療前相談です。指針は「診療前相談は、診断、処方その他の診療行為は含まない行為である」としています。相談の内容は診療録に記録することとされ、診療に至らなかった場合も記録を残すこととされています。
初診からの診療と、処方の制限
初診からのオンライン診療は、原則としてかかりつけの医師が行うものとされ、ほかの医師が行う場合には診療前相談などの条件が置かれています。初診で処方できないものとしては、麻薬および向精神薬、基礎疾患等が把握できていない患者に対する特に安全管理が必要な医薬品、同じく基礎疾患が把握できていない患者に対する8日分以上の処方が挙げられています。緊急避妊薬については別の取扱いが定められています。
医師の研修と、双方の本人確認
オンライン診療を行う医師は、厚生労働省が定める研修を受けることとされています。本人確認は患者側と医師側の双方に求められ、初診では写真付きの身分証明書が望ましいとされます。医師の側も氏名が分かる写真付きの身分証を示すこととされ、患者が資格を確認できるようにすることが示されています。
美容目的で使うとき、画面越しに確認できること
制度が変わったことで、利用する側が具体的に尋ねられる項目も増えました。どれも医療機関を選別するための基準ではなく、説明を受ける手がかりとして挙げるものです。
- 診療にあたる医師の氏名。厚生労働省の医師等資格確認検索システムで照合できます。
- オンライン診療の届出を済ませているか。経過措置の期間中であれば、その旨も含めて聞けます。
- 継続する場合に、診療計画が作られ保存されるか。
- 対面診療へ切り替える条件と、急変したときの連絡先・受診先が具体的に示されるか。
- 自由診療の場合、費用の総額と、副作用が起きたときの対応が事前に説明されるか。
- 処方される薬が国内で承認されたものか、承認の範囲外の使い方にあたるか。
承認の範囲外の使用そのものが違法というわけではありませんが、医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことがあります。効果や副作用の出方には個人差があり、画面越しの説明だけで判断を急がないことが、結果として選択肢を狭めずに済みます。
幹細胞・エクソソームをオンラインで勧められたとき
細胞そのものを投与する治療は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律の対象で、提供するには再生医療等提供計画をあらかじめ届け出る必要があります。計画が出ているかどうかは、再生医療ポータルの提供機関検索で調べられます。一方、エクソソームや幹細胞培養上清液は、現行の同法の対象外と整理されており、医薬品として承認されたものは存在しません。厚生労働省は令和6年7月31日の事務連絡で、この点についての注意を示しています。
画面越しの説明だけでこうした選択肢を検討する場面では、提供計画の番号や、実際に使われるものが細胞なのか分泌物なのかを、文書で確認できるかどうかが手がかりになります。確認に応じてもらえるかどうか自体も、判断材料のひとつです。
よくある質問
電話だけの診療もオンライン診療ですか
医療法上の定義は、映像と音声の送受信によって互いの状態を認識しながら通話できる方法とされています。電話のみによる診療は、この定義とは別のものとして扱われます。申し込みの前に、映像を用いる形式かどうかを確認しておくと行き違いが減ります。
届出をしていない医療機関は違法なのですか
2026年4月1日の時点ですでにオンライン診療を実施していた医療機関には経過措置があり、2027年3月末までに届け出ればよいとされています。期間中に届出が済んでいないことが、ただちに違法を意味するわけではありません。
美容目的の自由診療でも同じルールですか
指針や医療法上の手続は、保険診療と自由診療を分けて定められてはいません。費用や契約の面では、内容によって特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる場合があり、消費者庁の案内も参考になります。
初診でまとめて長期間分を処方してもらえますか
基礎疾患が把握できていない患者に対する8日分以上の処方は、初診では行わないこととされています。長期間の処方を提案された場合は、何をもとに基礎疾患を把握したのかを尋ねることができます。
美容医療の定期報告義務も始まったのですか
美容医療に関する定期報告などの規定は、公布後2年以内で政令が定める日からの施行とされており、オンライン診療の規定とは施行時期が異なります。報告制度については別の記事で整理しています。
参考にした公的情報
- 厚生労働省 第124回社会保障審議会医療部会 資料1「オンライン診療について」(令和8年1月26日)
- 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改訂について(令和8年4月2日 医政発0402第3号)
- 厚生労働省 医師等資格確認検索システム
- 厚生労働省 事務連絡(令和6年7月31日/エクソソーム・培養上清液)
- 再生医療ポータル 提供機関検索
- 消費者庁 特定商取引法ガイド(特定継続的役務提供)
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本記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。
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