「スマホのブルーライトで肌が老化する」「紫外線だけでなく可視光もシミに関係する」——ここ数年、紫外線以外の光を取り上げる情報が増えました。一方で、どこまでが研究で確かめられ、どこからが検証の途中なのかは分かりにくいままです。この記事では、(1)「可視光」「ブルーライト」という言葉が指す範囲、(2)波長ごとに報告されていること、(3)SPF・PAという表示が何を測っているのか、(4)対策として研究されている方法の現在地、(5)幹細胞・エクソソームなど再生医療分野との線引き、の5点を、公的資料と公表されている研究をもとに整理します。特定の製品や医療機関をすすめるものではありません。
「可視光」「ブルーライト」は何を指す言葉か
太陽光は、波長の短いほうから紫外線・可視光・赤外線に分けられます。目に見える光である可視光はおよそ400〜780nmの範囲で、そのうち短波長側(おおむね400〜500nm付近)が、俗に「ブルーライト」と呼ばれています。
注意したいのは、「ブルーライト」が厳密に定義された医学用語ではない点です。同じ言葉でも、太陽光に含まれる青色光を指している場合と、パソコンやスマートフォンの画面から出る光を指している場合があり、両者は後述するとおり強度がまったく違います。情報を読むときは、まず「どちらの話か」を確かめると誤解が減ります。
波長ごとに「報告されていること」を並べて整理する
下の表は波長域の区分と、これまでに報告されている主な作用を並べたものです。区分の説明であり、どれかを推奨したり、優劣をつけたりするものではありません。また、作用の現れ方には個人差があります。
| 区分 | おおよその波長 | 報告されている主な作用 | 市販品の一般的な表示指標 |
|---|---|---|---|
| UVB(中波長紫外線) | 280〜315nm | 日焼けによる赤み(サンバーン)、DNA損傷 | SPF |
| UVA(長波長紫外線) | 315〜400nm | 皮膚の深部まで到達。即時黒化や光老化との関連が指摘される | PA |
| 可視光(青〜緑) | 400〜500nm前後 | もともと色素量が多い肌で持続的な色素沈着を誘導したとの報告。酸化ストレス指標の上昇 | 統一された公的表示指標はない |
| 近赤外 | 780nm以上 | 温熱作用。真皮への影響は検討が続いている段階 | 統一された公的表示指標はない |
可視光による色素沈着の報告は、もともと色素量が多い肌(スキンタイプIV〜VI)を対象とした海外の研究で観察されたものが中心です。すべての人に同じ程度で起きるかは確かめられておらず、「可視光=必ずシミになる」と言い切れる段階ではありません。
SPF・PAは可視光を測っていない
日本化粧品工業会の解説によれば、SPFはUVBによるサンバーンに対する防止効果の指標、PAはUVAによる黒化に対する防止効果の指標です。いずれも紫外線域を測る指標であり、可視光域の防御を示すものではありません。
つまり「SPF50+・PA++++だから可視光も防げる」とは言えません。一方で、可視光防御について国内で統一された公的な表示基準は、2026年10月時点では見当たりません。「ブルーライトカット」などの表現は各社独自の評価方法にもとづくもので、製品どうしを数値で横並び比較できる状態にはなっていない、と理解しておくのが実際的です。
画面の光と太陽光は「量」が大きく違う
資生堂が2020年9月に公表した研究発表では、太陽光に含まれるブルーライトは、室内の照明やパソコン・スマートフォンから発せられるものと比べておよそ数百倍の強度があるとされています。同社はブルーライト照射によって酸化ストレスの指標(バイオフォトン)や過酸化脂質が増えることを確認したと発表していますが、これは一定条件で照射した際の測定であり、日常的な画面の使用がシミやくすみにつながることを示したものではありません。
この強度差をふまえると、屋外での紫外線対策を基本に置くという考え方は、環境省や気象庁が示している紫外線対策の資料とも整合します。室内の画面対策を否定する必要はありませんが、優先順位を取り違えないことのほうが現実的です。
可視光対策として研究されている方法の現在地
可視光は透明な紫外線吸収剤では防ぎにくいため、酸化鉄などの着色顔料を配合した「色つき(ティント)」の日焼け止めが可視光の透過を減らすという報告が、2020年のJournal of Drugs in Dermatology誌などで示されています。ただし参加人数が限られた短期の試験が中心で、日本人を含む幅広い肌での長期的な効果が確立しているわけではありません。「色がついている製品なら必ず可視光を防げる」とは言えない点に注意が必要です。
なお、衣類・帽子・日傘といった物理的な遮蔽は波長を選ばずに光を遮ります。これも推奨ではなく、選択肢として知っておくと判断材料が増えるという位置づけです。
再生医療・幹細胞・エクソソームとの線引き
光対策と再生医療は、本来まったく別の層の話です。幹細胞を用いる治療は再生医療等安全性確保法の規制対象で、提供にあたっては再生医療等提供計画の届出などの手続きが必要とされています。一方、エクソソーム(幹細胞培養上清液)を用いる施術は、厚生労働省の令和6年7月31日付事務連絡で示されたとおり現行法の規制対象外とされ、2026年時点で承認された医薬品は存在しません。
そのため「ブルーライトで受けたダメージを修復する」といった説明が添えられていても、それは国内で承認された効能ではなく、研究・検証の途中にある内容です。開発段階の技術に触れた情報を見たときは、国内で承認されたものかどうかを必ず分けて受け取ってください。
よくある質問
Q1. ブルーライトカットを謳う日焼け止めを選べばシミを防げますか
防げると言い切れる段階ではありません。可視光防御の公的な評価基準が国内で統一されていないため、表示だけでは製品間の比較ができないからです。まずはUVB・UVAに対する表示(SPF・PA)と、塗る量・塗り直しといった使い方を確認するほうが、実際の差につながりやすいと考えられます。
Q2. 室内で過ごす日は日焼け止めは不要ですか
窓際や外出の有無によって状況が変わります。UVAは窓ガラスを通過しやすいとされ、通勤・買い物など短時間の外出が積み重なる生活では屋外の光を浴びている時間が意外に長いこともあります。一律に「不要」「必要」と決めず、その日の過ごし方で判断するのが現実的です。
Q3. ブルーライトカットのフィルムやメガネは肌にも意味がありますか
肌への影響を目的に評価された製品ではないのが一般的です。前述のとおり画面由来の青色光は太陽光と比べて強度が小さいとされており、肌のために導入する根拠は現時点では弱いと言えます。目の疲れなど別の目的で使う分には問題ありませんが、効果の対象を混同しないようにしてください。
Q4. 「可視光対応」と書かれた化粧品は医薬品ですか
いいえ。化粧品や医薬部外品として販売されているものは、医薬品としての承認を受けたものではありません。表示できる範囲も法令で定められています。治療にあたるような表現が添えられている場合は、その根拠が何か(社内試験か、公表された研究か)を確認する視点が役立ちます。
Q5. すでにあるくすみは光対策で元に戻りますか
光対策は、これから受ける刺激を減らす目的のものです。すでにある色調の変化が戻るかどうかは、原因(炎症後の色素沈着か、肝斑か、角層の状態かなど)によって異なり、個人差もあります。気になる変化が続く場合は、自己判断で製品を重ねる前に医療機関で原因を確認することが先になります。
参考にした公的情報
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」
- 日本化粧品工業会「気になる紫外線用語CHECK!(SPF・PAの説明)」
- 気象庁「紫外線に関する知識:紫外線対策」
- 厚生労働省 事務連絡(令和6年7月31日/エクソソーム・培養上清液について)
- 厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について」
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本記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。
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