「飲む日焼け止め」と呼ばれるサプリメントの広告を目にする機会が増えています。塗るタイプの代わりになるのか補助なのか、言葉だけでは判断しづらいところです。
この記事では、経口で紫外線対策をうたう成分について2026年時点で何がどこまで調べられているのか、日本の制度上どの区分に当たるのか、そして幹細胞やエクソソームといった再生医療領域の話題とどう線を引いて読むかを整理します。特定の商品やクリニックをすすめるものではありません。
「飲む日焼け止め」は日本では何に分類されるのか
日本で「飲む日焼け止め」として流通しているものの多くは、医薬品ではなく食品(サプリメント)です。食品である以上、塗る日焼け止めのようにSPFやPAを表示することはできず、「日焼けを防ぐ」といった医薬品的な効能を広告で示すこともできません。
同じ売り場に並んでいても、塗るタイプは化粧品・医薬部外品、飲むタイプは食品と、適用される法律が異なります。「飲む日焼け止め」は通称であり、制度上の分類を表す言葉ではない、という点が出発点になります。
研究で調べられてきた代表的な成分と、分かっていること
ニコチンアミド(ナイアシンアミド)
ビタミンB3の一種で、海外では皮膚がんの発生を減らせるかという観点から臨床試験が行われてきました。オーストラリアで実施されたONTRAC試験(NEJM、2015年)では、皮膚がんの既往がある免疫が正常な人を対象に1日2回500mgを12か月服用し、新たな非メラノーマ皮膚がんの発生が対照群より少なかったと報告されています。ただし服用を終えた後も差が続くとは示されていません。
一方、臓器移植を受けた人を対象としたONTRANS試験では、皮膚がんの発生に統計学的に意味のある差は認められませんでした。2026年に公表された総説(Cancers誌)は、免疫抑制剤がDNA修復に関わる働きを妨げている可能性を挙げつつ、対象となる人によって結果が異なることを指摘しています。なお、こうした用途は国内で承認された効能ではありません。
ポリポディウム・ロイコトモス抽出物(PLE)
シダ植物由来の抽出物で、日やけによる赤みの出にくさを指標にした研究があります。2025年に発表された自己対照試験(47名が完了)では、PLEを1日2回240mg、30日間とった後に最小紅斑量が29%上昇したと報告されました。一方で同じ試験で、ニコチンアミドを1日2回1,000mgとった群では赤みの指標に変化は見られず、どちらの群でもDNA損傷の指標そのものは有意に減りませんでした。
つまり「赤くなりにくい」という結果が出ても、それが「紫外線によるダメージが防げている」ことまで意味するとは限らない、というのが現時点の読み方です。効果の感じ方には個人差があり、結論が確定した段階ではありません。
区分ごとの違いを並べて確認する
以下は区分の違いを説明するための整理であり、どれかをすすめるものではありません。それぞれ根拠の集まり方も表示のルールも異なります。
| 区分 | 日本での位置づけ | 広告でできる表現の目安 | 確認したい点 |
|---|---|---|---|
| 塗る日焼け止め | 化粧品または医薬部外品 | SPF・PAなど定められた表示が可能 | 塗る量・塗り直しの頻度 |
| いわゆる「飲む日焼け止め」 | 多くは食品(サプリメント) | SPF・PA表示や「日焼けを防ぐ」という医薬品的な表現はできない | 何の成分が何mg入っているか |
| 内服の医薬品 | 承認された効能・効果の範囲で使用 | 承認された効能の範囲のみ | その効能が紫外線対策として承認されたものか |
| 幹細胞・エクソソームを用いた施術 | 幹細胞は再生医療等安全性確保法の対象/エクソソーム(培養上清液)は承認医薬品が存在しない | 効果の断定や体験談による訴求はできない | 提供計画の届出の有無、自由診療である点 |
広告・表示のルールから見た注意点
食品が医薬品のような効能をうたうことは薬機法で制限され、根拠の乏しい効果の強調は景品表示法や健康増進法の観点からも問題になり得ます。消費者庁は健康食品の表示について留意事項を示しており、体験談や「医師監修」といった体裁だけでは根拠にならないという考え方が繰り返し示されています。
医療機関のサイトには医療広告ガイドラインが適用され、ビフォーアフター写真や体験談、効果の断定、過度な割引訴求が規制の対象です。広告の見え方と根拠の強さは別物として読み分けたいところです。
幹細胞・エクソソームと紫外線ダメージを結びつける説明をどう見るか
「紫外線で傷んだ肌を細胞レベルで立て直す」といった文脈で、幹細胞やエクソソーム(培養上清液)が紹介されることがあります。制度上は、幹細胞を用いた治療は再生医療等安全性確保法の対象で、提供には計画の届出などの手続きが必要です。
一方、エクソソーム(培養上清液)については、現時点で承認された医薬品は存在しません。厚生労働省は2024年7月31日付の事務連絡で、こうした製品の取扱いに関する注意を示しています。紫外線対策の話題と、まだ検証段階にある技術の話題が同じページに並んでいるときは、どこまでが確かめられた話なのかを分けて読む必要があります。開発中・研究段階のものは、国内で承認された医薬品ではありません。
よくある質問
Q1. 飲むタイプがあれば、塗る日焼け止めはやめてよいのでしょうか
2026年の総説は、経口のものはあくまで補助であり、外用の対策に取って代わるものではないという立場を示しています。日傘や衣類、塗る日焼け止めといった物理的な手段が基本に置かれている点は変わっていません。
Q2. 「SPF相当」と書かれた表示を見かけます
SPFやPAは塗る日焼け止めの試験方法に基づく指標で、食品に当てはめて表示できるものではありません。「SPF○○相当」といった表現が出てきた場合は、どんな試験の数字なのかを確認するのが先になります。
Q3. ニコチンアミドとナイアシンアミドは別物ですか
同じ成分を指す呼び方で、化粧品の成分表ではナイアシンアミド、医薬品ではニコチン酸アミドと書かれます。ただし塗る場合と飲む場合では、調べられてきた内容も量も異なるため、同じ根拠として扱うことはできません。
Q4. 日焼けしにくくなった実感があるのですが
体感は大切な情報ですが、その日の紫外線量や服装、体調によっても変わります。研究で自己対照という方法をとるのは、その差を取り除くためです。効果の現れ方には個人差があり、実感がそのまま根拠になるわけではありません。
Q5. 持病があったり薬を飲んでいたりする場合は
サプリメントでも、服用中の薬との関係や体質によって注意が必要な場合があります。自己判断で始める前に、かかりつけの医療機関に相談してください。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(PDF)
- 厚生労働省 事務連絡(令和6年7月31日/エクソソーム・培養上清液について)(PDF)
- 厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について」
- PMDA(医薬品医療機器総合機構)
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本記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。ここで扱う美容医療・再生医療の多くは公的医療保険が適用されない自由診療で、費用・主なリスク・副作用は医療機関により異なります。効果には個人差があり、個別の診断・治療の可否は医師の診察により判断されます。
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